走査型プローブ顕微鏡プロジェクト

 これまで走査型プローブ顕微鏡(SPM)の1つである非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)に関する多くの成果をあげてきました(「過去の研究成果」および「主要論文の解説」ご参照)。大阪大学基礎工学研究科着任後は、NC-AFMにこだわらず、SPMに関する新しいプロジェクトを開始しました。特に材料科学への貢献を見据えながら装置開発を行っていきたいと考えています。

機能性表面の原子レベル観察

 環境やエネルギー分野で期待される先進材料の優れた特性の多くは、表界面に局在する特定元素や点欠陥に起因しています。このような局在するナノ構造の素性を明らかにし、真の材料創製に繋げるには、理論・実験の緊密で実質的な連携によるナノ構造情報の系統的な獲得が必要です。本研究では、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いた物性計測第一原理計算に基づく理論計算技術の連携によるナノ構造情報獲得手法の開発を行うことを目的としています。一例として、酸化チタン表面の吸着原子やクラスタなどの持つナノ構造情報を定量的に抽出します。SPMの一つである非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)のフォーススペクトロスコピーによる原子識別や局所電子状態の同時測定を行うとともに、第一原理計算により表面原子構造・電子状態を解析し,触媒活性の起源となるナノ構造情報を解明します。 触媒材料だけに留まらず、固体イオニクス創製や表面機能セラミックス創製についても、研究を進めたいと考えています。広く共同研究を行い、領域内の分野横断的な密接連携研究により、ナノ材料科学の未踏フロンティアを世界最高水準で開拓したいと考えています。

 例えば、現在、パルスレーザー堆積法(PLD)で薄膜を作製し、真空を破ることなくNC-AFM/STM測定が行える世界初の実験を開始する準備を進めています。実用触媒材料系では、化学組成が複雑で、構造観察時に重要な表面方位の制御が困難である場合が多いあります。より精密にナノ構造情報を計測するためには、単結晶基板に成長させたクラスタや薄膜のモデル試料を用いることが有効です。試料作製とNC-AFM測定をin-situで行い、表面ナノ構造の原子レベルでの構造と機能を解明する。主たる研究対象は、当面は、ルチル型TiO2(110)表面上の金や白金とします。触媒やデバイス基板として用いられるアルミナ(Al2O3)表面の原子分解能測定にごく最近成功しており、Al2O3上の薄膜の初期成長過程や金属クラスタ形成過程についても、将来的には研究対象としたいと考えています。

走査型プローブ顕微鏡/パルスレーザー堆積法複合装置の開発

文章準備中

走査型プローブ顕微鏡/分子線ビームエピタキシー複合装置の開発

文章準備中

新規の走査型プローブ顕微鏡技術の開発

 これまで、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の研究において、非接触原子間力顕微鏡(NC-AFM)の装置開発および測定技術に関する研究を主に行って来ました。NC-AFMではカンチレバーの変位を高感度に測定する必要があります。通常はレーザー光とフォトダイオードを用いた光てこ方式が用いられていますが、私は光ファイバーを用いた光干渉方式を用いてきました。これを用いる利点は装置全体(AFMヘッド)の軽量化にあると考えています。また光源を装置の外に置くことができるので、熱の発生も抑えられます。現在の測定系の感度を向上させる研究を行なっています。また、超高真空で動作するNC-AFMの使用は非常に難しいため(そもそも真空装置はすべて扱いが難しいのですが)、少しでも使い勝手が良くなるような装置の改良を行なっています。


 今後はいくつかのテーマについてチャレンジしていきたいと考えています。具体的には、①高速AFMの材料科学への展開、②超高真空STMの高速化・高温化技術の開発、③自己検出型AFMの開発を行いたいと考えています。